ベッドのうえで眠りにおちる瞬間の抵抗、ものうくこころよい寝返りの刹那に私たちをおそう、あの透明ではげしい拡張感

（抱き抱えた幼児は）ずしりと重くなり、眠ってしまったのが分る。

新しい風みたいなものが体内をかけめぐり、きっと明日の朝にはきのうまでのことがすっかりきれいにとり去られているだろう。

列車に乗り、席に着くと、待ちかねたように眠りがやってきた。

泥のように眠りたい。石鹸のようにとけてなくなってしまって

太いイビキ

疲れ果て、泥のような眠りに落ちていた。

（眠れない）電灯をつけて時計を見た。それは二時だったり、三時半だったり、四時四十分だったりした。

心がそんなことにひっかかると私はいつも不眠を殃（わざわ）いされた。眠れなくなると私は軍艦の進水式を想い浮かべる。その次には小倉百人一首を一首宛思い出してはそれの意味を考える。そして最後には考え得られる限りの残虐な自殺の方法を空想し、その積み重ねによって眠りを誘おうとする。

寝入るときはそのままねむりの中ヘズブ沼に沈みこむようにひたすら体をゆだねていけばそれでいい