風もない青空に、黄に化（な）りきった公孫樹（いちょう）は、静かに影を畳んで休ろうていた。

銀杏（いちょう）が秋になると黄鼈甲（きべっこう）いろにどんより透き通って、空とすれすれな梢（こずえ）に夕月が象眼したように見える

午前の日光のなかで静かに影を畳んでいた公孫樹（いちょう）は、一日が経たないうちにもう凩（こがらし）が枝を疎（まば）らにしていた。

メインストリートが真直ぐにのびていて、両側は銀杏並木の黄色でいっぱいだった。風が吹くといっせいに木々が揺れて、葉っぱがぱらぱらと斜めに落ちていった。空の青さの中で、一枚一枚の黄色の輪郭がくっきりと浮かび上がった。その黄色は、地面に落ちてくるまでの間に陽を浴びて何度も光った。

銀杏（いちょう）が金色をしている。

町が華やいで見えるのは、きっとオンコの実が色づいたせいだ。街路樹の赤で、見違えるように通りが明るい。

寒国育ちの犬の首っ毛のように、ふかふかした枯草

大きな松の木が地面に広い樹影を落としている

白っぽく糸のように白い葉

芽というものが持つ小さい逞（たくま）しいいのちは、かの女の愛感を牽（ひ）いた。