矢のように走って行く。

はずんだ石ころのように坂道をかけおりた

風のように駆ける

長い手足をアヒルのようにぶきっちょにふって走った。

通路を誰かが走ってくるような激しい靴音が聞こえてきた。

この時間帯に機嫌が悪いのは眠たいからだ。

何事も心得ながら白々（しらじら）しく無邪気を装っているらしいこの妹が敵の間諜（かんちょう）のようにも思えた。

子どもたちは、子鹿のようにかけだした。

子供が一人家の中にいると楽しいし、みんな若がえるよ。うるさいけどね。毎日目の前で育っていく感じがして、すごく面白いよ。

肩に子供の泣き声を背負う

子供など 所詮、慰みものにすぎん。おのれの生きた証をそれにしか見いだせない男が、子を作り、後生大事に可愛がるのだ。

鳶色に薄桃色をさした小づくりの顔は、内部の逞（たくま）しい若い生命に火照（ほて）ってあたたかく潤っていた。

未熟な果物のような乳呑児（ちのみご）

（エコー写真）その写真を見せられた時、凍りついた夜空に降る雨のようだと思った。《…略…》夜空は深く清らかな黒色で、じっと見続けているとめまいがしそうだった。雨ははかない霧のように空を漂っていた。そしてその霧の中に、ぽっかりそらまめ型の空洞が浮かんでいた。《…略…》そらまめ型の空洞に目を凝らした。夜を濡らす霧雨の音が聞こえてきそうだった。その空洞のくびれた隅にひっかかっているのが赤ん坊だった。それはもろい影の塊で、風がふくと夜の底へはらはら舞い落ちていきそうだった。

ひまわりのような明るい娘

きっぱりとした足取り

猫のような足取りで忍び寄る

雑踏の中、行き交う人に揉まれながら歩く

ネズミのように走り回る

袴（はかま）の捌（さば）ける音