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月はまだ上らない。見渡す限り、重苦しいやみの中に、声もなく眠っている京 の町は、加茂川の水面 がかすかな星の光をうけて、ほのかに白く光っているばかり、大路小路の辻々 にも、今はようやく灯影 が絶えて、内裏 といい、すすき原といい、町家 といい、ことごとく、静かな夜空の下に、色も形もおぼろげな、ただ広い平面を、ただ、際限もなく広げている。
芥川龍之介 / 偸盗 ページ位置:52% 作品を確認(青空文庫)
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夜
夜のしじま(静けさ)
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前後の文章を含んだ引用
......を曇らせながら、思わず道ばたに足をとめて、苦しそうにつぶやいた。 「どうせみんな畜生だ。」 六 ふけやすい夏の夜 は、早くも亥 の上刻 に迫って来た。―― 月はまだ上らない。見渡す限り、重苦しいやみの中に、声もなく眠っている京 の町は、加茂川の水面 がかすかな星の光をうけて、ほのかに白く光っているばかり、大路小路の辻々 にも、今はようやく灯影 が絶えて、内裏 といい、すすき原といい、町家 といい、ことごとく、静かな夜空の下に、色も形もおぼろげな、ただ広い平面を、ただ、際限もなく広げている。それがまた、右京左京 の区別なく、どこも森閑と音を絶って、たまに耳にはいるのは、すじかいに声を飛ばすほととぎすのほかに、何もない。もしその中に一点でも、人なつかし......
単語の意味
朧げ(おぼろげ)
火影・灯影(ほかげ)
灯影(とうえい)
夜空(よぞら)
京(けい・きょう)
朧げ・・・ボーっとしてはっきりしない。不確かなさま。
灯影・・・電灯やともし火の光や影。
夜空・・・夜の空。
京・・・1.数の単位のひとつ。一兆の一万倍。古くは、一兆の10倍を指した。
2.都のこと。京都や東京の略。
2.都のこと。京都や東京の略。
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夜は萃(人名)に似ている。 昼間思うとかすんでいて、大したことなく思える。でもいざやって来ると、その 闇 の肌ざわりは、 抗えないほど巨大で純粋だ。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
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夜道はなにごともなく静まりかえっていて、まるでなにごとも変わりなく一日が眠りにつくように思えた。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
どこの家もしんとして赤子の泣く声が時おり聞こえるばかりだ。
有島武郎 / 生まれいずる悩み
十二月の真夜中は、深海にいるかのように静かで暗かった
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
あたりは静かで、世界中で目を覚ましているのは(私たち)二人きりのよう
五木 寛之 / 海を見ていたジョニー amazon
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「時間帯(朝・昼・夜)」カテゴリからランダム5
月のいい夜だ、星が高く光っている。
林芙美子 / 新版 放浪記
インクのしみのような太陽がわずかばかりの薄明を地上に投げる
福永 武彦 / 草の花 amazon
暗い西の空から大空の高い天頂にかけてかすかに光のさまようているような最後の暮の色
野間宏 / 第三十六号「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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