前方車両が次々と、ブレーキを踏むのが見え、やがて停車した。しばらくすると、先頭から順々に、ブレーキランプが消えていき、車は動き出した。

車は夜の盛り場の渋滞に巻き込まれてのろのろと進んだ。

カーラジオの交通情報が、東名高速上り線の渋滞が四十キロに達したと告げた。

下り線は順調に流れている。上り線だけが悲劇的に渋滞している。

渋滞の見本帳に載せたいような立派な渋滞

（はだし）背中を汽車が来る。地響きが足の裏にぶきみだ。

どこに円盤があるってんだよー、と笑いまじりに私が言いかけたとき、眼前の暗い町並みとネオンのがたがたした切り絵と空の区切りのラインから、ちょうど目線のあたり、夜空を切りわけるようにツーっと、左から右、光る飛行機雲のようなものが横切った。 　はっとした。 　それは私たちの目の前の景色の真ん中あたりで、地上のどのようなマシーンよりも優雅な止まり方でぴたり、と止まって、 　ぴかーっと輝いて、消えた。 　私が今までに見たどの光よりも 凄烈 だった。想像して言うなら、苦しみのうちに胎道を通りぬけて、初めてこの世に生まれ出る瞬間のまぶしさのようだった。それくらい美しく、清らかで、くりかえせない発光だった。いつまでも見ていたかった。

船は海岸近くの波に激しく動揺しながら、艫を海岸のほうに向けかえてだんだんと汀（みぎわ）に近寄って行く。

巨人が息を吐くような音で、ドアが開く。

船は風に逆らい、黙って闇へ突き進む。それは何か大きな怪物のように思われた。

多くの輸送トラックのあいだに、まるで無骨なサイの群れに紛れ込んでしまったしなやかなレイヨウのように、銀色のメルセデス・ベンツ・クーペが一台混じっていた。

（冬の縁日）まっ暗な道の向うに、縁日の灯火が見えて来て、それが近づくにつれ、アセチレンの灯火の匂いが冷たい空気の中にただよってくる。

シャワーのような連射

「えっ？　朔美？　感じ変わったね。」 「えっ？　ほんと？」 「よく見ないとわかんなかった。」 「新郎側の 親戚 かと思った。」 　金ぴかの披露宴会場で、ひらひら着飾って真っ白に化粧した若い女の群れに口々にそう言われたら何だかおかしな気分になった。 　天界のものたちにありがたくてしかたないことを言われてるみたいだった。

また一つ爆発音が轟いて、また一つ轟いた