(丸かじり)トマトも丸かじりのほうが断然おいしい。トマトがおいしくなくなった、と、よくいわれるが、丸かじりするとどういうわけか不思議に昔のトマトの味になる。 よく冷えたトマトに、なるべく大きくかぶりつく。かぶりついたら唇の全域をトマトに密着させる。シルの落下を防ぐためと、トマトのシルを一滴も残さず吸い取ろうという魂胆である。 そうしておいて歯のほうはトマトの嚙み取り作業に専念させる。 トマトの表面を唇でなぞるようにして少しずつ閉じていってトマトから離す。口の中のトマトのジュースと、不定形の果肉といっしょに嚙みつぶす。昔の、あの懐かしい、少し青くさくて日なたくさく酸っぱい味がするはずだ。
東海林 さだお「タコの丸かじり」に収録 ページ位置:43% 作品を確認(amazon)
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......しずつくずしていくことになる。 このナスの塩漬けが、薄く平べったく小さく切ってあったらどうだろう。 嚙み方も一定、口の開き方も一定、味も一定ということになる。 トマトも丸かじりのほうが断然おいしい。トマトがおいしくなくなった、と、よくいわれるが、丸かじりするとどういうわけか不思議に昔のトマトの味になる。 よく冷えたトマトに、なるべく大きくかぶりつく。かぶりついたら唇の全域をトマトに密着させる。シルの落下を防ぐためと、トマトのシルを一滴も残さず吸い取ろうという魂胆である。 そうしておいて歯のほうはトマトの嚙み取り作業に専念させる。 トマトの表面を唇でなぞるようにして少しずつ閉じていってトマトから離す。口の中のトマトのジュースと、不定形の果肉といっしょに嚙みつぶす。昔の、あの懐かしい、少し青くさくて日なたくさく酸っぱい味がするはずだ。 キュウリも丸かじりがいい。 キュウリは丸かじりするとバリバリと音がして、いかにも嚙みくだいているという快感がある。 嚙みくだいているうちにだんだん勇壮な気分に......
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薄い頬の肉が、頬張ったフライのかたちそのままに膨らんで、引っぱられた唇の隙間からヤニに汚れた歯がのぞいている。
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