繁華街の酒気を感じさせる強い風

イルミネーションの光りの方がむじひだ。皮を剥（は）いだ、底の底まで見透せる妙な光りかたである。美人が少しも美人にはみえない。光りの空、息苦しい光彩の波の中に、人はひしめきあっている。

週末で、町にはけっこう大勢の人がいた。夏の夜気とあいまって、祭りじみた活気があった。

何気なく空を見た。街のあちらこちらでネオンが灯っている。それは、いつもと変わらない。渋谷の風景だった。

イルミネーションにまみれた闇

イルミネーションにまみれた闇

淡い夕闇の中に、この飯やだけは古風な、以前のままのかまえを凜々しく見せて、中へ入れば十余年前がそのままに存在していた。

山の中の湯の湧（わ）くとこ

ぬるい空気の中、疲れてプールサイドに坐っていた。 　人々は禁欲的に泳いでいる。高い天井の下、水しぶきをあげて。

その場所は説明がなければディスコティックというよりは巧妙につくられた温室か水族館と言っても通用しそうだった。何もかもがガラスで作られているせいだ。床と天井をのぞけば、テーブルも壁も装飾品もぜんぶがガラス製だった。そして至るところに巨大な観葉植物が配されている。 　ガラスの仕切りで区切られたブロックのあるものの中では人々はカクテル・グラスを傾け、あるものの中では人々は踊っていた。それは僕に精密な透明の人体模型のようなものを連想させた。ひとつひとつの部分がそれぞれの原則にしたがってきちんと機能している。《…略…》店内にはガラスの壁がはりめぐらされ、それは透明な迷路をさえ思わせる。