店を出る頃には、雨は雪に変わっていた。 　大気にたっぷりと満ちた湿気のおかげか、雪の舞う街は妙に暖かく、俺は間違った季節に迷い込んでしまったような不安をふいに感じる。

路面にこびりつくように残っていた凍った雪は足元でバリバリと音を立てる

雪が飛白模様に見える程度に降る

雪が激しさを増した。コートのジッパーを一番上まで上げて、マフラーを花の上でぐるぐる巻いた。それでも寒かった。

空を漂う雪と凍りついた空気が触れ合う、透明な音を聞いたような気がした。

（夜、戸を蹴破ると銀世界）眼を射（い）るような白夜の光が、さッと、室内へ冷たい空気をふきこんだ。

初冬の時雨（しぐれ）はもう霰（あられ）となって軒をはしった。

（富山の街）一年を終えると、あたかも冬こそすべてであったように思われる。土が残雪であり、水が残雪であり、草が残雪であり、さらには光までが残雪の余韻だった。春があっても、夏があっても、そこには絶えず冬の胞子がひそんでいて、この裏日本特有の香気を年中重く 澱よどませていた。

屋根の雪がどおっと谷じゅうに響きわたるような音を立てながら雪崩れ落ちる

まっくらな夜空を埋めつくして雪が舞っていた。