頭の芯に突き刺さってくるような真夏の道の反射

夏の朝の日光が、いちめんに板金のように打ち延ばされて輝やいていた。

さっき通った牛車（ぎっしゃ）のわだちが長々とうねっているばかり、その車の輪にひかれた、小さな蛇（ながむし）も、切れ口の肉を青ませながら、始めは尾をぴくぴくやっていたが、いつか脂（あぶら）ぎった腹を上へ向けて、もう鱗（うろこ）一つ動かさないようになってしまった。どこもかしこも、炎天のほこりを浴びたこの町の辻で、わずかに一滴の湿りを点じたものがあるとすれば、それはこの蛇（ながむし）の切れ口から出た、なまぐさい腐れ水ばかりであろう。

すり硝子のような半透明な梅雨時の光線

庭の緑が光に打たれてぐったりしている。

八（や）つ口（くち）の綻（ほころ）びから秋風（あきかぜ）が断わりなしに膚（はだ）を撫（な）でてはっくしょ風邪（かぜ）を引いたと云う頃

夏の名残が引いてゆく気配を、汗が兆すようで意外と乾燥したままの額の 縁 に感じた。

その年の短かい夏が九月初めの不確かな大気の揺らめきに吸い込まれるように消えた後も、鼠（人名）の心は僅かばかりの夏の名残りの中に留まっていた。

旱（ひでり）の多かった夏にも雨が一度来、二度来、それがあがるたびごとにやや秋めいたものが肌に触れるように気候もなって来た。

夏は過ぎた。太陽の光が日増しに黄色く弱っていく。

川に沿って植えられた樹々の若い葉の匂いがした。その緑色があたりの空気の中にしっくりとにじみこんでいるようだった。

窓から外を見やれば、見えるものはまだまだいっこうに白くて熱を吸ったり吐いたりをじっとして繰り返すまま。

熱い頭を冷やすような真夏の夜の雨

旱（ひでり）のためうんかがたくさん田に湧いたのを除虫燈で殺している。

正覚坊（しょうがくぼう）の卵みたいな、三寸玉から五寸玉ぐらいまでの花火の外殻（から）