ある日、空は早春を告げ知らせるような大雪を降らした。 朝、寝床のなかで行一は雪解の滴 がトタン屋根を忙しくたたくのを聞いた。 窓の戸を繰ると、あらたかな日の光が部屋一杯に射し込んだ。まぶしい世界だ。厚く雪を被った百姓家の茅屋根 からは蒸気が濛々 とあがっていた。生まれたばかりの仔雲! 深い青空に鮮かに白く、それは美しい運動を起こしていた。
梶井基次郎 / 雪後 ページ位置:19% 作品を確認(青空文庫)
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春
雪解け
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前後の文章を含んだ引用
......行ってくださったら、俺の管轄内に事故のあったことがないって。いつでもそんなことを言って、巡回しないらしいのよ」 大家の主婦に留守を頼んで信子も市中を歩いた。 ある日、空は早春を告げ知らせるような大雪を降らした。 朝、寝床のなかで行一は雪解の滴 がトタン屋根を忙しくたたくのを聞いた。 窓の戸を繰ると、あらたかな日の光が部屋一杯に射し込んだ。まぶしい世界だ。厚く雪を被った百姓家の茅屋根 からは蒸気が濛々 とあがっていた。生まれたばかりの仔雲! 深い青空に鮮かに白く、それは美しい運動を起こしていた。彼はそれを見ていた。 「どっこいしょ、どっこいしょ」 お早うを言いにあがって来た信子は 「まあ、温かね」と言いながら、蒲団を手摺 りにかけた。と、それはすぐ日向の匂い......
単語の意味
濛濛・朦朦・濛々・朦々(もうもう)
茅屋(ぼうおく)
早春(そうしゅん)
青空(あおぞら)
濛濛・朦朦・濛々・朦々・・・煙・霧・ほこりなどが、視界が悪くなるほど立ちこめるさま。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
同じ漢字を重ねることで、語調を整えて意味を強めた表現。
茅屋・・・1.かやぶき屋根の家。ぼろぼろの家。あばら家。
2.自分の家をへりくだって言う語。
2.自分の家をへりくだって言う語。
早春・・・春の初め。2月から3月初めのころ。初春。浅春(せんしゅん)。
青空・・・1.青く晴れた空。雲のない青い空。青く澄んで見える空。碧空。蒼天。
2.他の語に付いて「戸外で行う」「屋外」「露天」の意味を表す。
2.他の語に付いて「戸外で行う」「屋外」「露天」の意味を表す。
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春が一番だ。春のわくわくするような気持ちと、花や土や水の香りがまじりあった空気の甘さに、かなうものはない。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
一面茶の木が鶯餅 を並べたように萌黄 の新芽で装われ、大気の中にまでほのぼのとした匂いを漂わしていた。
岡本かの子 / 東海道五十三次
岸に近い海面が春の海藻の丹の色に染まる
三島由紀夫 / 潮騒 amazon
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梶井基次郎 / 雪後
朝の旭町 はまるでどろんこのびちゃびちゃな街だ。
林芙美子 / 新版 放浪記
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春もやや準備が出来たといった工合 に、和やかなものが、晴れた空にも、建物を包む丘の茂みにも含みかけていた。
岡本かの子 / 母子叙情
一面茶の木が鶯餅 を並べたように萌黄 の新芽で装われ、大気の中にまでほのぼのとした匂いを漂わしていた。
岡本かの子 / 東海道五十三次
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