教会の鐘の音がカンカンとけたたましく鳴る

遠くの寺でゆっくり鐘を打つのが響いて来る。

鐘の音がこうこうと響く

（鐘の音）朝六時にるらーん、るらーん、と睡りのおくの方で揺れる

チーンと鐘の音が引き摺るように尾を引く

（遠くに見える歓楽街の光）心の中には、幸橋の上から 眺めた道頓堀の遠い 光芒こうぼう が映し出された。 眩まば ゆく華やかな眺めであったはずだったが、邦彦には、かつて見たこともない冷え冷えとした、ひどくちっぽけな景観として心に 甦って来るのである。 　色とりどりの光をまとった船が、暗い海原に出航して行き、それを視界から消え去るまでじっと見送っていた、そんな空虚な寂しさがまといついて、邦彦は幸橋から見えていた夜の道頓堀が、人気のない一 艘そう の満艦飾の船みたいだったように思えるのだった。

硝子に雨の雫を伝わらしている街燈の灯はまるで暗い人生の隅っこに泣きそべっている二人の影のように見えていた。

二基並んでいるエレベーターはどちらも他の階へ行ってしまった

柿の果ほどの電燈

銀色の針金が顔に絡みついたような眼鏡