車にはあいかわらずしみひとつなく、それは太陽の下で異様なくらい眩しく光り輝いていた。ちょっと手を触れただけで皮膚がどうにかなってしまいそうだった。

砂山が、まぶしい日のうずまきを頂いている

日光が妙に肌膚（はだ）へ揉み込むように暖かでかつ暑かった。

窓から差し込む光りが描く線

溪間からは高く一日日の当るこの平地の眺めほど心を休めるものはなかった。私にとってはその終日日に倦（あ）いた眺めが悲しいまでノスタルジックだった。Lotus-eater の住んでいるといういつも午後ばかりの国――それが私には想像された。

暗の中でかすかに蔀（しとみ）を開く音。それと共にうすい月の光がさす。

蜜柑山に照りかえった黄いろい陽を浴びて村道に出た。

空は青ペンキを撒いたかのように綺麗な青色をしていて、逃げ遅れた小さな雲が、西の方に浮かんでいるだけだった。

そんな土地にふりそそぐ陽光は、うまくできたたまご焼きのように、しあわせな黄色をしているものです。

夜、月が数々の葉末を剣のように光らした。空はそのあわいに 藍色 に澄んで、満月に近い月を、高く冷たく浮べていた。