太刀（たち）に、血を塗る

目の前に垂れているシーツを切り裂くように、刃を振る。

竹槍が脇腹から背の方へ突き通っているのを光秀は思考の失せかけている頭の中で感じた。光秀は田楽刺しのまま、相手を見据えた。

蓑を刎（は）ねた浪人者の顔を、酉兵衛は、あっと、一眼見たきりだった。ずばっ――と片手なぐりに、肋骨（あばら）へ斬り下げられて、 「ウーム……」と、真ッ赤なものを吐く爬虫類（はちゅうるい）みたいに、手も足も縮め込んで、雨の中を、転がった。

ナイフを離そうとするが、柄に接着剤がついているみたいで指がほどけない。ナイフにも手にも、人間の身体を刺した感触がはっきり残っている。

左ジャブ

ガンと殴られて痙攣でも起こしたように、ぐっとのけぞる

していることの実感をつかみたいというだけの理由で、たて続けに何度も刺している無表情な十和子

男の背中から包丁の柄が突き出している。後ろから刺されたようだ。肉体から工具が生えているようだった。

凄まじい形相で角材を振り上げた。 「ふんんっ！」 　狙いをつけて、それをドーベルマンの背中に打ち下ろした。