肌寒いほどの底冷え

サッシ戸まで開け放つ。尖った冷気が流れ込んでくる。

感覚を失った靴の爪先から這いのぼってくる寒さ

四頭のトナカイは全員が毛糸の靴下をはいていた。おそろしく寒い夢だった。

山の凍てついた空気のなかを暗（やみ）をわけて歩き出した。身体はすこしも温かくもならなかった。

（蒸し暑い夜）風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温（あたた）かさが、両岸の土からも、川床（かわどこ）の土からも、もやになって立ちのぼるかと思われる夜（よ）

空気が静まり、寒さの目が詰まってくる

厚い登山用のパーカを頭からかぶった。それでも体に浸み込んでくる寒さは防ぎきれなかった。

芝居小屋のなかは思ったように蒸し暑かった。

サユリは顔を上げてスタンを見詰めた。彼女の息のかぐわしい香りは冷たい空気のせいで凝固してしまったらしく彼の所まで届かなかった。