口中が口内炎だらけになって、喉の奥なんて、口内炎の銀河みたいになってて。

万斛（ばんこく）

甲板の欄干にそうてびっしりと並んだ顔の列の中に、佃を見出そうとしながら。 　顔はいかにも沢山だ。それがかさなり合い、帽子や外套の色にまぎれて、とても一つ一つ、近眼の彼女には見分けられない。

中空には生徒の数に劣らない沢山の赤トンボが、まるでなにかの図案のように群れ飛んでいた。

町へ出ると日の丸だらけで、まぼしいくらいである。

薄紙を剥ぐように

平らな水に偶然落ちて来た微風のひき起こす小さな波紋ほどの変化

ナメクジの行進みたいに徐々に

数えるほどしかない

（ポストはどこにでもある）ポストはどこにでもあり、かつ捜そうとするとなかなか会えない。心細い街角に不意にあったり。晴れた日も雨の日も夜中も、世界中に、まるで夜空の月がすべての水に映るようにポストはある。