麻痺した交通網

煙脂煙管（やにきせる）の如く、ぎっちり詰まって動けなくなった

道路は自動車がひしめき合い、よたよたと行ったり来たりしている

前の車からブレーキランプが消え、ゆるゆると渋滞が動き出す

速度を落としていく。今度は、ちょっとした渋滞が発生しているらしい。

機関室で、なつかしいエンジンの音がしている。手をはなしながら、私は沈黙ってエンジンの音を聞いていた。

ビルの谷間を縫うように走る

（馬に）拍車を入れた。遠くかすんでみえる営庭の 柵 が、斜めになって動いた。

ツーサイクル独特の不規則な、はりつめた皮の太鼓の上に豆をばらばらと撒き落としたような排気音

（敵機の爆音の）その 蜜蜂 の羽音のような単調な 唸り

エメラルドグリーンのサンゴ礁にかこまれた緑の島。

リゾート地らしく、浜を取り囲むようにずらりと巨大なホテル群がそびえたっていた。

（夏祭り）普段、暗闇に飲み込まれてしまう小学校の広いグラウンドは、今日は提灯で照らされて昼間のように明るかった。

（離婚）僕らはうまくやっていた。でも彼女が求めているもの、彼女が頭に描いているもの、と僕の存在の間には決定的な差があった。妻はコミュニケーションの自立性のようなものを求めていた。コミュニケーションが染みひとつない白旗を掲げて人々を輝かしい無血革命へと先導していくようなシーンを。完全性が不完全性を呑み込んで治癒してしまうような状況を。そういうのが彼女にとっての愛だった。僕にとっての愛とは不器用な肉体を与えられた純粋な概念で、それは地下ケーブルやら電線やらをぐしゃぐしゃと通ってやっとの思いでどこかに結びついているものだった。すごく不完全なものだった。ときどき混線もする。番号もわからなくなる。間違い電話がかかってくることもある。《…略…》僕は彼女に説明した。何度も何度も。 でも彼女はある日出ていった。

この手術によってかえって死が決定的になるような不安が強かった。麻酔で昏睡するのが死の予行演習のような気がした。