そとでは虫が織るようにないている

季節と季節を繋ぐ糸は断ち切れても、なお一筋二筋、かすかに秋を繋ぎ止めているとでもいうような鳴き声で蟋蟀（こおろぎ）が聞える。

私は瀬を揺がす河鹿の声のなかに没して

激しい河の流れや虫の音が、地の底からわき立つようだ。

この瀬にはことにたくさんの河鹿がいた。その声は瀬をどよもして響いていた。遠くの方から風の渡るように響いて来る。それは近くの瀬の波頭の間から高まって来て、眼の下の一団で高潮に達しる。その伝播（でんぱ）は微妙で、絶えず湧（わ）き起り絶えず揺れ動く一つのまぼろしを見るようである。

（晴れた）空は虻（あぶ）や蜂（はち）の光点が忙しく飛び交っている。

それらの虫どもは、夏の自然の端くれを粉にしたとも言いたいほどのごく微細な、ただ青いだけの虫

月明かりに照らし出されたゴルフ場の芝では何千匹という秋の虫が折り重なるように鳴き続けている。

枯葉色の小さな楯のような形をしたカメ虫

（こおろぎの）雄の、羽根を擦り合せている音は、まるで小声で女を呼ぶような甘くて物悲しいものであった