吾輩はおとなしく三人の話しを順番に聞いていたがおかしくも悲しくもなかった。人間というものは時間を潰 すために強 いて口を運動させて、おかしくもない事を笑ったり、面白くもない事を嬉しがったりするほかに能もない者だと思った。
夏目漱石 / 吾輩は猫である ページ位置:15% 作品を確認(青空文庫)
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......念でしたな」と云う。 迷亭はとぼけた顔をして「君のような親切な夫 を持った妻君は実に仕合せだな」と独 り言 のようにいう。障子の蔭でエヘンと云う細君の咳払 いが聞える。 吾輩はおとなしく三人の話しを順番に聞いていたがおかしくも悲しくもなかった。人間というものは時間を潰 すために強 いて口を運動させて、おかしくもない事を笑ったり、面白くもない事を嬉しがったりするほかに能もない者だと思った。吾輩の主人の我儘 で偏狭 な事は前から承知していたが、平常 は言葉数を使わないので何だか了解しかねる点があるように思われていた。その了解しかねる点に少しは恐しいと云う......
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涎(よだれ)を流すような唸り方
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