まだ肌の白くかつ薄赤味を帯びた人形の手足のような甘藷（さつまいも）

塩をつけてベッチャリとふかしあがったお芋をたべていると、ただむやみとつまらないものが胃の中につまってゆくようだった。

ぬくもりのあるねっとり甘い藷（いも）の粒子が、舌と口腔をくまなく塗りつぶすような味

（焼き芋）汚なづくりのおじさんが、汚なづくりの屋台を引っぱって歩きつつ、ときどき「いーしやーきいもー。早く来ないと行っちゃうよー」などと寝ぼけた声で放送しながら冬の木枯らしの中を歩いていくというイメージ

焼き芋は、手に持てないほど熱いのを、新聞紙にくるんで防熱処理をほどこし、フーフー吹いて食べるのがうまい

初めて本物コンニャクを食った。今まではコンニャク風だった気がする。

精進料理では透明でコリコリと身の締まったコンニャクを、その食感から「山ふぐ」と言うらしい

〔とろろ飯〕は麦飯に味噌仕立て。三十年前とすこしも変らぬ野趣があった。

母に「コンニャクは何から出来るの？」と尋いたら、無責任な母は「コンニャクは消しゴムからできるのさ」と、こたえた。

焼きたての焼き芋を割ると、フワッと湯気が昇る。中は温かみのある山吹色。フハフハとかぶりつくと自然の甘みが口の中に広がる。まさに大地の恵みがもたらした味だ。