一点一画もおろそかにしない肉太な筆の文字

細かい粒の揃った丸っこい字を丹念に書く

蟻のようにこまかい字

のたくった字で、解読するのに時間がかかる。

博士のいつもの筆跡だった。全体的に丸みを帯び、所々鉛筆がかすれていながら、雑な雰囲気はなく、むしろ記号の形や０の合わせ目には丁寧さが感じられる。用紙の面積に比べ、数式は小さめで、真ん中よりやや上に、慎ましやかに記されている。

ボールペンの走る音が聞こえてくる

（優れた文章）その文章は一見したところシンプルで無防備でありながら、細かく読んでいくと、かなり周到に計算され、整えられていることがわかった。書きすぎている部分はひとつもなかったが、それと同時に、必要なことはすべて書かれていた。形容的な表現は切り詰められているものの、描写は的確で色合いが豊かだった。そして何よりもその文章には優れた音調のようなものが感じられた。声に出して読まなくても、読者はそこに深い響きを聞き取ることができた。

燃えているような字体の梵字

表札に彫られた「にな（蜷）」の漢字は、私の知らない、虫偏の難しい漢字で、なんとなくかたつむりを連想させる字だ。

恨みつらみを交えた白羽さんの身の上話は長くて、私は途中からほとんど聞かずに時計を見ていた。