池の水は桔梗の青い色

岸という限界さえ崩れてしまった水溜りのような古池

遠方に模糊と煙るが如く白くひろがっている十三湖

（夜の）洞窟（どうくつ）のように黒く深まる古池

いくつも鮒（ふな）が泳ぎ流れて来て、新茶のような青い水の中に尾鰭（おひれ）を閃めかしては、杭根（くね）の苔を食（は）んで、また流れ去って行く。

夜気はこまやかに森（しん）として、遠くごく遠く波の音もする。夜、波の音は何故あのように闇にこもるように響くのだろう。

夜の河原の石たちは、昼間受けた日の光を溜め込んだみたいに明るく白い。穏やかに流れる川面は、反射する光もなくその流れも波立ちもうかがえず黒く重かった。その暗さに飲み込まれたみたいに草の伸び広がった中州も真っ黒で、二股に分かれた流れの奥側の川面はもう見えない。

海は、サンゴ礁の中とはいえ、あまり遠浅でなく泳ぎよかった。すき透った水は、まるでゼリーのように柔らかく優しく、下を見ると、きれいな魚が泳いでいた。海辺にねころんだり、本を読んだりしている人の中には、トップレスの女性も多かった。きれいな人は、美しさを誇るごとくだったが、ひどく太ったおばさんも、平気で裸になっていた。

だいぶ高くなった日の光がぱっと大森田圃（おおもりたんぼ）に照り渡って、海が笑いながら光るのが、並み木の向こうに広すぎるくらい一どきに目にはいるので、軽い瞑眩（めまい）をさえ覚えるほどだった。

小石を撒くような水の音