(パリ)人間性の、あらゆる洗練を経た後のあわれさ、素朴さ、切実さ――それが馬鹿らしい程小児性じみて而 も無性格に表現されている巴里。鋭くて厳粛で怜悧 な文化の果てが、むしろ寂寥を底に持ちつつ取りとめもない痴呆 状態で散らばっている巴里。真実の美と嘆きと善良さに心身を徹して行かなければいられない者が、魅着し憑かれずにはいられない巴里
岡本かの子 / 母子叙情 ページ位置:5% 作品を確認(青空文庫)
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前後の文章を含んだ引用
......なかった。だから、おれの身代りにも、むす子を置いて行く」 だが、こう筋立った逸作の言葉の内容も、実は、かの女やむす子と同じく巴里に憑かれた者の心情を含んでいた。人間性の、あらゆる洗練を経た後のあわれさ、素朴さ、切実さ――それが馬鹿らしい程小児性じみて而 も無性格に表現されている巴里。鋭くて厳粛で怜悧 な文化の果てが、むしろ寂寥を底に持ちつつ取りとめもない痴呆 状態で散らばっている巴里。真実の美と嘆きと善良さに心身を徹して行かなければいられない者が、魅着し憑かれずにはいられない巴里 ――だが、そこからは必ずしも通俗的な獲物は取り出せないのだ。むす子がどれ程深く喰 い入りそこから取り出すであろう芸術も、それをあの賢夫人やその他多くの世間人達がむ......
単語の意味
素朴(そぼく)
寂寥(せきりょう)
怜悧・伶俐(れいり)
厳粛(げんしゅく)
嘆く・慟く・歎く(なげく)
洗練・洗煉・洗錬(せんれん)
素朴・・・あまり手が加えられていない、自然に近い状態のこと。ありのままで飾り気がない状態のこと。素直で単純。
寂寥・・・人気がなくて、寂しい感じ。心が満たされず寂しい感じ。寂寞。
怜悧・伶俐・・・利口なこと。賢いこと。頭の回転が速いこと。また、そのさま。
厳粛・・・1.真剣な態度をせずにはいられない雰囲気のさま。「厳粛な儀式」
2.まじめで甘えや妥協などないさま。「判決を厳粛に受け止める」
2.まじめで甘えや妥協などないさま。「判決を厳粛に受け止める」
嘆く・慟く・歎く・・・1.悲しみやの怒りの気持ちを強くあらわす。ひどく悲しむ。悲しんで泣く。
2.満たされない思いにため息をつく。嘆息(たんそく)する。
3.世の風潮などに心を痛めて憤る。慨嘆(がいたん)する。
4.心から切に願う。願う。強く望む。躍起(やっき)になる。
2.満たされない思いにため息をつく。嘆息(たんそく)する。
3.世の風潮などに心を痛めて憤る。慨嘆(がいたん)する。
4.心から切に願う。願う。強く望む。躍起(やっき)になる。
洗練・洗煉・洗錬・・・物を洗ったり練(ね)ったりして仕上げるように、文章や人格などを美しく磨かき整えること。磨き上げて、全体として無駄のない出来ばえに仕上げること。垢抜けたものにすること。
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(サイパン)南の空は明るく光り、風はなまぬるくジャングルを揺らしていた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
クウェートはイラクとサウジアラビアにはさまれた、ペルシャ湾に面した小さい石油国である。
石井 好子「東京の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)」に収録 amazon
(サイパン)花の色が違う。陽の成り立ちからして違う。きっとここでは、考え方も違う。強さとか、明度とか。
吉本 ばなな「アムリタ(下) (新潮文庫)」に収録 amazon
(パリ)巴里という都は、物憎い都である。嘆きや悲しみさえも小唄 にして、心の傷口を洗って呉れる。
岡本かの子 / 母子叙情
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(畑は)前菜の卓のように蔬菜 を盛り蒐 めている。
岡本かの子 / 母子叙情
底のないすり鉢を降りているのではと疑われるくらい、長い長い下りの時間が過ぎる
奥泉 光 / 石の来歴 amazon
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