煎（い）りつくように蝉が鳴きたてている。

降るような蝉の声の中

降るような蝉の鳴き声

蟬が鳴きつづけていた。彼らは終りかけた季節を呼び戻すために、死にものぐるいで羽をこすりあわせていた。

雑木林から滝のように 蟬 の声が聞えて

植え込みのてんとう虫は、茎のこちら側から裏側へ、裏側から表面へと移動しながら、上を目指した。長い茎を、螺旋階段を模すように、くるくると回り込みながら、上昇していく。祝福を誰かに届けるために、せっせと駆け上がるかのようだ。

時折、何に驚いたのか、雑木林の中で一匹の油蟬がチ、チと飛びたつ。

窓を開けて、出て行ってくれるように祈る

モゾモゾと小さいゼンマイのようなものが、身体の下側を走る

牢廂（ろうびさし）の蜘蛛（くも）を見ていた。月に架けた一すじの糸に、青い露の玉が、キラと、明滅している。