良枝は唇を 歪めて笑った。怒りに 滾たぎる頭の中の 醒めた片隅で、祐次は改めて良枝の美しさを確認した。

華やかな横顔

暗い所にいて明るいほうに振り向いた時などの愛子の卵形の顔形は美の神ビーナスをさえ妬（ねた）ます事ができたろう。顔の輪郭と、やや額ぎわを狭くするまでに厚く生（は）えそろった黒漆（こくしつ）の髪とは闇（やみ）の中に溶けこむようにぼかされて、前からのみ来る光線のために鼻筋は、ギリシャ人のそれに見るような、規則正しく細長い前面の平面をきわ立たせ、潤いきった大きな二つのひとみと、締まって厚い上下の口びるとは、皮膚を切り破って現われ出た二対（つい）の魂のようになまなましい感じで見る人を打った。

一度見たら頭にずっと残る、蟲惑的な美貌

顔は悪くない。特に尻の下がった弓なりの眉と目尻の上がった大きい目がいい

色白で目鼻立ちのきりっとした賢そうな少女

母の血を受けて人並みより青白い頬をした少女

化粧を夜の灯の下で映える色味で仕上げる

ひょうたんのような顔

目と目の間が迫っているのが、細面の顔からいくぶんの気品を奪っているようだ