一つずしりと揺れて、徐 に汽車は動き出した。一本ずつ眼をくぎって行くプラットフォオムの柱、置き忘れたような運水車、それから車内の誰かに祝儀の礼を云っている赤帽――そう云うすべては、窓へ吹きつける煤煙 の中に、未練がましく後 へ倒れて行った。
※備考※ プラットホームから走り出す汽車
芥川龍之介 / 蜜柑 ページ位置:15% 作品を確認(青空文庫)
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車窓からの風景
電車・汽車
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前後の文章を含んだ引用
......口の方から聞え出したと思うと、間もなく車掌の何か云い罵 る声と共に、私の乗っている二等室の戸ががらりと開いて、十三四の小娘が一人、慌 しく中へはいって来た、と同時に一つずしりと揺れて、徐 に汽車は動き出した。一本ずつ眼をくぎって行くプラットフォオムの柱、置き忘れたような運水車、それから車内の誰かに祝儀の礼を云っている赤帽――そう云うすべては、窓へ吹きつける煤煙 の中に、未練がましく後 へ倒れて行った。私は漸 くほっとした心もちになって、巻煙草 に火をつけながら、始めて懶 い睚 をあげて、前の席に腰を下していた小娘の顔を一瞥 した。 それは油気のない髪をひっつめの銀杏返......
単語の意味
未練がましい(みれんがましい)
未練がましい・・・未練たらたら。諦めが悪い。
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車窓からの風景の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
(電車の)正面の窓ガラスに、私と彼の顔が並んで映っていた。暗やみに斜めに浮かぶ美しい夜景に重なって
吉本 ばなな / 新婚さん「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon
二人は並んだ顔が景色に透けて、車窓を夜と共に走ってゆくのを見つめ合った。
吉本ばなな / うたかた「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
ぼんやり向かい側の車窓から見える動く景色を見ていた。
松本 清張「点と線 (新潮文庫)」に収録 amazon
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電車・汽車の表現・描写・類語(乗り物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
機関車は永いこと、呟いたり、ため息したり、歯軋りしてから、郊外の平凡な田園の中へ旅立った
三島由紀夫 / 真夏の死 amazon
遠く弓なりに 百足 のような汽車が見え出す。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon
鉄のライオンのような機関車
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon
病人の歯軋りのようなレールの軋り
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
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「乗り物」カテゴリからランダム5
艦艇が小さく小さく、玩具のように海上に置かれている
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
闇をつんざきつつ、五台の自動車が、無言のまま物の怪に憑かれたように疾走する
徳永 直 / 太陽のない街 (1953年) amazon
七尾は以前、一度だけ参加したことのあるカジノのルーレットのことを思い浮かべていた。どこに球が落ちるのか、それをもったいつけるかのようなゆっくりとした動きでルーレットは止まるが、新幹線もそれと似た雰囲気を見せた。駅で待つどの乗客の前で車両が止まるのかを選ぶように、どこにしようかなあのねのね、と焦らすかのような様子で、速度を落とし、そして、乗客の前に止まった。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル amazon
汽船はゼンマイ仕掛のおもちゃのそれのようだった。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
「地上・陸地」カテゴリからランダム5
難破船のような黒い島が波にもまれる
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
(タクシーが)走り出すとすぐに駅前の家並は尽き、道の両側は畑と雑木林ばかりになった。
浅田次郎 / ラブ・レター「鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)」に収録 amazon
(橋を渡る)人の流れは途切れがなく、あたかも一本の川みたいで、ふたつの川が、ちょうど十字形に交差しているように見えていた。道頓堀川という大きな泥溝と、 夥しい人間の群れによって作りだされている濁流との交わりだった。
宮本 輝「道頓堀川(新潮文庫)」に収録 amazon
小松の茂った山が盆を伏せたように煙る
水上 勉 / 雁の寺 amazon
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