雲が湯気のように立つ

空には刷毛で引いたような細い雲が幾筋か流れ

蒸気の雲

空は朗らかに晴れ、絵巻のように黄金に輝いた雲が浮かんでいた

海原にかかる大瀑布のごとく、横にのびた巨大な渦巻く雲

地上へ上がり眩しい日差しの中へ踏み出す

太陽が雲の隙間からアスファルトを照らした。

陽に照らされたホームの屋根は銀色に光っている

陽射しが強い。木々の枝葉に繁る鮮やかな緑が瞼に眩しい。

光が霧のように落ちてくる

てらてらと太陽から溶け出てきたような陽射しが、黒鉛と汗で汚れたキャンバスを橙色に染めている。

空にはうすい雲がすっかりかかり、太陽は白い鏡のようになって、雲と反対に馳（は）せました。

扉を少し開けると刃のような冷たい光が射してくる

黎明れいめい の薄い光が射し込む

白子の表面に 焦げめが出来、湯気が入口の格子戸から差し込んでいる 幾いく 条すじ かの 陽ひ の光の中を昇った。

月の光が木の間から細い噴水のようにながれこんで

空の高いところで雲がうっすら溶ける

様々なかたちと大きさの雲が空を素速く吹き流されていく。雲は白く緊密で、輪郭がくっきりとして、雪解けの川を海に向けて運ばれていく堅い氷塊のようにも見える。いずこからともなく現れて、いずこへともなく消えていくそんな夜の雲を見ていると、自分が世界の果てに近い場所に運ばれてきたような感覚があった。

月明かりに蜜柑が狐火のようにポツポツと浮かんで、まるで夢のともし火の海

自分の影を両側の街燈が次には交互にそれを映し出した。後ろから起って来て前へ廻り、伸びて行って家の戸へ頭がひょっくり擡（もちあが）ったりする。慌（あわただ）しい影の変化を追っているうちに自分の眼はそのなかでもちっとも変化しない影を一つ見つけた。極く丈の詰った影で、街燈が間遠になると鮮（あざや）かさを増し、片方が幅を利かし出すとひそまってしまう。「月の影だな」と自分は思った。見上げると十六日十七日と思える月が真上を少し外れたところにかかっていた。自分は何ということなしにその影だけが親しいものに思えた。