元は老夫婦の家なので、一歩足を踏み入れただけで、視界から色が抜け落ちてしまったような感覚に襲われる。祐一が脱ぎ捨てた赤いスニーカーだけが、汚れてはいても、唯一、そこに明るい色を残す。
吉田修一「悪人」に収録 ページ位置:24% 作品を確認(amazon)
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室内の雰囲気
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前後の文章を含んだ引用
......。「晩メシ食うてから」 祐一がまたぼそっと呟いて車を降りる。 祐一のあとを追って玄関に入ると、病人がいる家特有のにおいがした。祐一が一緒に暮らしているとはいえ、元は老夫婦の家なので、一歩足を踏み入れただけで、視界から色が抜け落ちてしまったような感覚に襲われる。祐一が脱ぎ捨てた赤いスニーカーだけが、汚れてはいても、唯一、そこに明るい色を残す。「おばさん!」 さっさと廊下を歩いていく祐一に呆れながら、憲夫は奥へ声をかけた。 靴を脱いでいると、「あら、憲夫が来たとね? 珍しか」と祐一に尋ねる房枝の声が聞......
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室内の雰囲気の表現・描写・類語(室内のようすのカテゴリ)の一覧 ランダム5
(古い造りの平屋)昔の家だからか、天井が低く、全体的にこぢんまりしている。玄関の正面にある襖は閉じられていて、にな川はその襖の脇にある磨りガラスの敷居戸を開けた。薄暗い板張りの細長い廊下が長く続いていて、靴下を通して、板廊下の冷たさが足の裏に染みてくる。今が初夏だということを忘れさせてくれる家だ。廊下の奥にある引き戸の先には、日当たりの悪い狭い庭があり、《…略…》庭には盆栽や古雑誌、旧式の小さな洗濯機や物干し竿なんかがあって、さしずめ屋根のない物置きといったところ。足元の生えっ放しの雑草には、蚊が群がっている。
綿矢 りさ / 蹴りたい背中 amazon
(オフィスの)窓は広く、大通りに面していたが、騒音はまったく聞こえない。初夏の陽光が、部屋の床に敷かれた無地のカーペットの上に落ちていた。品が良く、怠りのない光だった。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 amazon
部屋はさすがに葉子のものであるだけ、どことなく女性的な軟 らか味を持っていた。
有島武郎 / 或る女
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「室内のようす」カテゴリからランダム5
床置きにされたファクシミリからは、送信された印刷物が吐き出されていた。
小池真理子「愛するということ (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
白熱電球の光が、板張りの床の上で黄色っぽく弾けていた。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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