どんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽 が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱 した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心を撲 たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。
梶井基次郎 / 桜の樹の下には ページ位置:17% 作品を確認(青空文庫)
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神々しい・神秘的
花
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前後の文章を含んだ引用
......浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが――そして俺にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり同じようなことにちがいない。 いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽 が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱 した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心を撲 たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。 しかし、昨日、一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。俺にはその美しさがなにか信じられないもののような気がした。俺は反対に不安になり、憂鬱 になり、空......
単語の意味
後光(ごこう)
後光・・・1.仏や菩薩の背中から放射するといわれる神秘的な光。
2.仏像の後ろにある、”1”をかたどったもの。光背(こうはい)。
2.仏像の後ろにある、”1”をかたどったもの。光背(こうはい)。
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不思議とも何とも形容の出来ない神秘的な変化
夢野久作 / ドグラ・マグラ
杉や楠の巨木の前に立ったときの、おのずと合掌してしまう神々しさ
高田 宏 / 木に会う amazon
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うす緑の空気の中に、清らかな白い花びらが、まるで眠れる蝶のように、静かに咲いている
森田 たま / 菜園随筆 amazon
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おいらん草が、顔を洗ったように綺麗
林 芙美子 / 山中歌合「風琴と魚の町/清貧の書 (新潮文庫 は 1-4)」に収録 amazon
煩いほどに枝葉が繁茂した街路樹
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
バオバブは小さな木じゃないよ。教会みたいに大きいんだ。
サン=テグジュペリ / 星の王子さま amazon
道の左手から気まぐれな風がやってきて、積もった落葉にさざ波をたてながら右手に去っていった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
銀杏が黒い夜の空に怪物のように突っ立っていた。
広津和郎 / 神経病時代 amazon
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