複雑に交差する電線の隙間からのぞく空

雲は骨のように白く細く、空は突き抜けるように高かった。

空は気持悪いくらいくっきりと晴れていた。戦前の表現主義映画のシーンを思わせる空だった。遥か上空を飛んでいるヘリコプターが不自然なほど小さく見えた。雲ひとつない空はまるで瞼を切りとられた巨大な眼のようだった。

ガラスのように冷たく明るい空

透き通るような青みを帯びた空

眼下に広がる景色は豆粒のようにはるか続き、緑と街、無人と人々の営み、森と海、この島のそういうすべてのバランスを惜しみなくさらけだしている。このすごい空の色がその何もかもに溶け込み、甘い明るさをつけ加える。

川面に映った月が波に砕けて、ひっくり返した宝石箱のようにきらめいていた

流星、と書いてある、ばかでかいトラックがぎらぎらした電飾とすごくでっかい音でわきを走り抜けて行った時、「ここにいるみんなが日々いやな思いをしませんよう」と祈ってみた。

研ぎ出したような月

どこまでも寡黙に、頑なな石の心をもって天空のその場所に腰を据えていた。