呆れるくらい大きな鼾

人のいい主人の鼾（いびき）も平らだ。

僕のシャツの袖は彼女の寝息であたたかく湿っていて、それが妙にくすぐったく感じられた

赤ん坊は、小さな寝息をたてて眠っている。

子供のようにすやすやと安らかないびきが葉子の口びるからもれて来た。

思考がだんだん脱落していって頭が闇の底の方へ楽々と沈んで行った。

まだ意識がぐるぐるかけまわっていたが、肉体のほうからずどん、という感じで眠りが落ちてきた。

夢もない深い眠りに陥って

目を閉じるといろいろな音が聞こえてきた。博士のいびき、毛布の衣擦れ、氷の溶ける気配、ルートの寝言、ソファーの軋み。二人の発する音たちは、発熱のアクシデントを忘れさせ、私を安堵させ、眠りに導いてくれた。

二日も私は御飯を食べない。しびれた体を三畳の部屋に横たえている事は、まるで古風なラッパのように埃（ほこり）っぽく悲しくなってくる。生唾（なまつば）が煙になって、みんな胃のふへ逆もどりしそうだ。