かすかに凌霄花 のにおいがした。門の左右を埋 める藪 のところどころから、簇々 とつるをのばしたその花が、今では古びた門の柱にまといついて、ずり落ちそうになった瓦 の上や、蜘蛛 の巣をかけた楹 の間へ、はい上がったのがあるからであろう。
芥川龍之介 / 偸盗 ページ位置:70% 作品を確認(青空文庫)
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蔓(つる)
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前後の文章を含んだ引用
......おのずから頂きをおぼろげな月明かりにぼかしながら、どの峰も、じっと物を思ってでもいるように、うすい靄 の上から、静かに荒廃した町を見おろしている――と、その中で、かすかに凌霄花 のにおいがした。門の左右を埋 める藪 のところどころから、簇々 とつるをのばしたその花が、今では古びた門の柱にまといついて、ずり落ちそうになった瓦 の上や、蜘蛛 の巣をかけた楹 の間へ、はい上がったのがあるからであろう。…… 窓によりかかった阿濃 は、鼻の穴を大きくして、思い入れ凌霄花のにおいを吸いながら、なつかしい次郎の事を、そうして、早く日の目を見ようとして、動いている胎児の......
単語の意味
蜘蛛(くも)
蜘蛛・・・クモ目の節足動物の総称。8本足で体は袋状。尻から糸を出す。ほとんどの種は糸を使って巣を張り、そこに虫を捕らえて食べる。
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蔓(つる)の表現・描写・類語(植物のカテゴリ)の一覧 ランダム5
蔓自身は弓弦(ゆづる)のように張りきった
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
巻蔓は、空の方へ、身を悶えながらもの狂おしい指のように、何もないものを捉えようとしてあせり立っている
佐藤 春夫 / 田園の憂鬱 amazon
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「植物」カテゴリからランダム5
胡桃の新芽はなかなかいい。かっちりした精巧な銅版画を見るような気分
がする
小沼 丹 / 胡桃「小沼丹全集〈第3巻〉」に収録 amazon
福寿草があちこちに黄色い毬(まり)のように群がって咲く
原田 康子 / 挽歌 amazon
根が、老いた蛇の肌のように灰白色に乾いてささくれだって、しぶとくうねっている
日野 啓三 / 抱擁 amazon
担いだ竹が、尻尾のように葉音を鳴らしながらついて来る
伊集院 静 / 三年坂 amazon
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