彼が眼醒（めざ）めたときは、耶馬台（やまと）の宮は、朝日を含んだ金色（こんじき）の霧の底に沈んでいた。

障子越しに差し込む朝日も生まれたての清潔さで

光の領域が部屋の隅々に広がり、闇が後退していく

日の光の新しい午前の往来

柔らかく粉のように白っぽい朝の陽ざし

（午後）太陽が天頂を通過したあと

お天陽様の光りを頭いっぱい浴びて、さて今日はいい事がありますように……。

人通りの絶えた四条通は稀（まれ）に酔っ払いが通るくらいのもので、夜霧はアスファルトの上までおりて来ている。両側の店はゴミ箱を舗道に出して戸を鎖（とざ）してしまっている。所どころに嘔吐（へど）がはいてあったり、ゴミ箱が倒されていたりした。喬は自分も酒に酔ったときの経験は頭に上り、今は静かに歩くのだった。

陰がさらに陰をつくる夜の闇

日は一間半ばかりの辺に傾いて、僕等二人が立って居る茄子畑を正面に照り返して居る。あたり一体にシンとしてまた如何（いか）にもハッキリとした景色、吾等二人は真に画中の人である。

縁側に腰をかけて日向（ひなた）ぼっこをしていると、黒い土の上から、モヤモヤとかげろうがのぼっている。

うららかな春日（はるび）は一流れの雲も見えぬ深き空より四海天下を一度に照らして、十坪に足らぬ庭の面（おも）も元日の曙光（しょこう）を受けた時より鮮（あざや）かな活気を呈している。

夕陽は簾すだれを通して 斑まだら に彼の顔にあたり

雲は太陽を 覆いかくして鉛色に低くたれこめていた。

橋の傍の会議所の建物が、そこだけ朝の光を受けて、金色に大きく浮びあがった。