眼にしみるような青葉の道だ

虫が葉の表面を、針の先ほどの隙もなく覆う

草汁を撒きかけたように、斑な緑が町並のところどころを染めて涼しかった。

堤防の上の葉ざくらの深い緑が眼を射る

葉はどこにも感じない微風に動揺して自分のみが怖じたように騒いでいる。

三月の半ば頃私はよく山を蔽（おお）った杉林から山火事のような煙が起こるのを見た。それは日のよくあたる風の吹く、ほどよい湿度と温度が幸いする日、杉林が一斉に飛ばす花粉の煙であった。しかし今すでに受精を終わった杉林の上には褐色がかった落ちつきができていた。瓦斯（ガス）体のような若芽に煙っていた欅（けやき）や楢（なら）の緑にももう初夏らしい落ちつきがあった。闌（た）けた若葉がおのおの影を持ち瓦斯体のような夢はもうなかった。ただ溪間にむくむくと茂っている椎（しい）の樹が何回目かの発芽で黄な粉をまぶしたようになっていた。

獣の背中の毛のようにきらめく雑草の広がり

子供たちが「こんぺとう」と呼んでいるその菓子の形をした仄赤く白い小さな花

葉柄ようへい の集まる 梢こずえ に、実が小児の頭のように円みを並べていた。

大きな銀杏の木の影が、船の帆のように雑貨屋の屋根瓦まで伸びる