マドリッドゆきの飛行機は、ピレネー山脈の上空で嵐に出あい、それこそ死ぬ思いをした。ちょうど食事どきだったが、不意に大きなエア・ポケットにおちたので、コップもお皿もおかずごと天井まで舞い上り、それがおちてきたから、われないコップ、われないお皿ときいていた皿もコップもみじんにくだけて、おかずはとびちり、ケガをする人、気絶をする人も出た。《…略…》マドリッドについたら救急車が迎えにきていた

飛行機は蚊よりも脆く落ち

（巨大な炎を吐く飛行機は、）ゆっくりと滑走路を滑り始めた。地面が揺れている。銀色の巨大な金属は徐々にスピードを増す。ピッチの高い音で空気が燃えているように感じる。《…略…》胴体の脇に付いたさらに巨大な四機の筒が青い炎を吐いた。《…略…》飛行機は白い腹が浮いたかと思うと、あっという間に雲の中に吸い込まれた。

流星花のようにその飛行機は墜ちて

（B29五百機、P51百機）戦爆連合の、しかも白昼のかかる大挙来襲ははじめてである。この百里原あたりの空も、ために密雲に覆われたようにくらくなり、「雨かな」と言ったものさえあった。

何処か遠いところで一声、急に、鋭く、長い尾を引っぱって汽笛が鳴った

机のうえに広げたノートや、開けっぱなしの窓、飲みかけの麦茶、ほしっぱなしの洗濯物。私の、マリーセレスト号みたいな部屋

そんなに飛ばすと事故るよ、という声は風に紛れて届かないだろう

昨日この敷石の上を人力車がガラガラと通ったときは、むやみに大げさな音がするので少しよわった

（転覆）漁船がてんぷくして、鯨の背のような船底を見せている