不安な恋情を複雑に搔き立てた。

胸はしめつけられるように苦しくなる。でもそれは心地の良い苦しさだ。いくらでも耐えられる苦しさだ。

胸を貫く忘我の感覚があった。

ゲレンデが溶けるほど恋いしたい

この恋はとても特殊に白く光っていて　（あの日のＵＦＯみたいに）、違う運命にジャンプするために二人で組まなくてはいけない、という感じがした。 　後のことはいいから、とにかく今、手をつないで飛ばないと、このめまぐるしく変化する人生とはぐれてしまう。

（十三の）彼は 恋 という言葉を知らなかったが、今、その恋に思い悩んでいるのであった。

（昨夜のセックス）アルコールに 宿酔ふつかよい があるように恋にも酔いの名残りがあるのかもしれない。昭子は体のふしぶしに昨夜の恋を残していた。

動きを止めてからも、なお体をすり寄せてくるまち子の体を触りながら、邦彦は鋭利な刃物で切り刻まれたような鈍痛を自分の体の中に感じていた。 　いつしか路上の男ふたりも去ってしまい、邦彦の 猛り気負うたものも引いて行って、ただ青い色をたたえた熱気と、歓楽街の 喧噪 だけが、狭い和室を埋め尽くしていた。

彼といると柔らかいもので包まれているような感じがする

処女を捨てたいからって好きでもない人としたら、たぶん終わってすぐは普通だけど、だんだん取り返しがつかないほど後悔してぶつぶつひとりごとを言うようになり、自分の貞操を探して毎夜、上野公園の不忍池の辺りを這いずりまわる人生になるだろう。処女とは私にとって、新品だった傘についたまま、手垢がついてぼろぼろに破れかけてきたのにまだついてる持ち手のビニールの覆いみたいなもので、引っ剥がしたくてしょうがないけど、なんか必要な気がしてまだつけたままにしてある。自然にはがれたらしょうがないけれど、無理やり取っぱらうのは忍びない。