動揺を隠すように唇を嚙み締めた。

全てははったりだったが、コースは合っていた。それにつづく沈黙の不確かさは、僕がポイントを稼いだことを示していた。

「お母さん、今夜名古屋で造花の展示会があるの。新しいデザインがたくさん出るらしいから、ちょっと行って来るわ」 　昭子は口先では滑らかに言ったが、言葉のどこかにぎごちなさがあるのを意識しないわけにいかなかった。

背負い投げを喰らったみたいに綺麗に騙される

ごまかす

言えば言うほど何かがずれていくのを感じながら、話し続けた。わかってもらいたいという欲望はなくて、彼にわかるようにフィクションを語っていた。うそではなくても、ぜんぜん本音ではないことだった。

知らぬ顔を装っていた。

汗をかく。顔を歪める。必要以上に笑う。鼻に手をやる。眉をこする。鼻が膨らむ。さらには前置きで、「嘘じゃないよ」と宣言することさえある。様々な方法を用いて、人は自分の嘘を知らせてくれる。

北村は目顔で否定の意味を示した。

表情を変えずに心にもないことを言う。