座敷の中が、いつになく春めいて主人の笑い声さえ陽気に聞える。

街は春の売出しで赤い旗がいっぱいひらひらしている。

まだ春寒の残っている冷たい空気の中に、何やら芽や花のにおいが交じっている

眠たげな甘さを含んだ四月の海

新緑が華やかに森を彩る

冬が過ぎ、新しい年度になる。

（北海道の春）春がどっと押し寄せてくる

少しずつ、庭の桜が開いていく。二階の窓から、庭木の緑の中のピンクの分量がじょじょに増えてゆくのを毎日見ているだけで楽しい。

透き通る水滴のような鶯の声

花曇りに暮れを急いだ日は疾（と）く落ちて、表を通る駒下駄の音さえ手に取るように茶の間へ響く。隣町（となりちょう）の下宿で明笛（みんてき）を吹くのが絶えたり続いたりして眠い耳底（じてい）に折々鈍い刺激を与える。外面（そと）は大方朧（おぼろ）であろう。