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私は太陽光線の偽瞞 をいつもその杉林で感じた。昼間日が当っているときそれはただ雑然とした杉の秀 の堆積としか見えなかった。それが夕方になり光が空からの反射光線に変わるとはっきりした遠近にわかれて来るのだった。一本一本の木が犯しがたい威厳をあらわして来、しんしんと立ち並び、立ち静まって来るのである。
梶井基次郎 / 冬の蠅 ページ位置:26% 作品を確認(青空文庫)
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夕方
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前後の文章を含んだ引用
......った。私は日の当った風景の象徴する幸福な感情を否定するのではない。その幸福は今や私を傷つける。私はそれを憎むのである。 溪 の向こう側には杉林が山腹を蔽 っている。私は太陽光線の偽瞞 をいつもその杉林で感じた。昼間日が当っているときそれはただ雑然とした杉の秀 の堆積としか見えなかった。それが夕方になり光が空からの反射光線に変わるとはっきりした遠近にわかれて来るのだった。一本一本の木が犯しがたい威厳をあらわして来、しんしんと立ち並び、立ち静まって来るのである。そして昼間は感じられなかった地域がかしこにここに杉の秀 並みの間へ想像されるようになる。溪側にはまた樫や椎 の常緑樹に交じって一本の落葉樹が裸の枝に朱色の実を垂れて......
単語の意味
光線(こうせん)
雑然(ざつぜん)
堆積(たいせき)
射光(しゃこう)
光線・・・光のすじ。光の線。差してくる光。
雑然・・・いろいろなものが交じり合って整ってないさま。「然」は他の語の後ろに付いて、状態をあらわす字。
堆積・・・何重にも高く積み重なること(もの)。雨風など自然の力で土砂が運ばれて、地表や水底にたまること。
射光・・・光を出すこと。また、その光。
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夕方の表現・描写・類語(時間帯(朝・昼・夜)のカテゴリ)の一覧 ランダム5
パーキング・エリア内は暮色が辺りを包み、オレンジ色の街灯が灯っていた。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
外はまだ完全には暗みきれておらず、淡く滲んだ 朽葉色の照明が、狭い路地を抜けて、これから食事に向かう人々の明るい表情に反射している。
平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
卵色の濁った夕空
宮本百合子 / 伸子
温度が急に下がった気がして、俺は夕陽に目をやる。太陽はいつの間にか雲の後ろに沈んでいる。直射から解放されて、光も影も溶け合って、世界の輪郭がぼんやりと柔らかくなっている。空はまだ輝いていて、しかし地上は淡い影にすっぽりと包まれている。ピンク色の間接光が、周囲に満ちている。 そうだ。こういう時間帯の、呼び名があった。黄昏。誰そ彼。彼は誰。人の輪郭がぼやけて、この世ならざるものに出逢う時間。その古い呼び名。俺は呟く。 ──カタワレ時だ。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
脚本の文字が読みにくいと思ったら、いつの間にか陽が傾いていた。
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon
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