父が病身で、入院退院をくりかえしていて、二日も会いにゆかないと、ふざけ半分、皮肉半分、「どこか、ご旅行でしたか」という。四日もゆかないと「パリへお出かけでしたか」といった。一週間、会わないと、もうすねて「あなたはどなたです」という始末であった。

皮肉なしかし快い鼓舞

今にも皮肉が出てきそうな片側に 歪んだ薄い唇

立派とまで言われると皮肉のように聞こえる

「なかなか味わい深いですね」と私は言った。そこに込められた皮肉の響きを、彼が感じ取ったようには見えなかった。

断崖絶壁の瀬戸際まで追い詰める

クーデターを起こす

帝都の空を蹂躙するＢ29

私は何かせっぱつまったものを感じた。

戸惑いと反感が同時に湧いた。反感が勝った。 「人の家を覗き見るような真似はやめて下さい」