アケビの蔓の、花は明るい紫色だ。 もちろん、そのときは木の名前なんか知らない。ただ、「きれいだなあ」と、夜が近づきあたりが見えなくなるのを惜しむばかりだった。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 ページ位置:29% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
春の夕方・夜
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......が鼻先をよぎった。ウツギが枝先に小さな蕾をたくさんつけている。かと思うと、十五メートルはあろうかというアオダモが、泡のような白い花を頭上で揺らす。樫の木に絡んだアケビの蔓の、花は明るい紫色だ。 もちろん、そのときは木の名前なんか知らない。ただ、「きれいだなあ」と、夜が近づきあたりが見えなくなるのを惜しむばかりだった。 花の香りで息苦しいほどだ。研ぎ澄まされたのは嗅覚だけでなく、聴覚もだ。森はもっと静かなものだと思ってたけど、全然ちがった。いつもどこかで、葉が落ち茂みの揺れる......
単語の意味
惜しむ(おしむ)
紫(むらさき)
惜しむ・・・残念に思う。もったいないと思う。
ここに意味を表示
春の夕方・夜の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
春の初めの夜は、闇の色合いや風の感触が柔らかく、少しも寒くない。
小川 洋子「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
花曇りに暮れを急いだ日は疾 く落ちて、表を通る駒下駄の音さえ手に取るように茶の間へ響く。隣町 の下宿で明笛 を吹くのが絶えたり続いたりして眠い耳底 に折々鈍い刺激を与える。外面 は大方朧 であろう。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
森鴎外 / 高瀬舟
このカテゴリを全部見る
「春」カテゴリからランダム5
桜が川岸に沿って生えているので春には桜の花びらが川の表面を覆い尽くしながら流れていく。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon
なんという美妙な美しい色だ。冬はあすこまで遠のいて行ったのだ。そう思うと、不幸を突き抜けて幸福に出あった人のみが感ずる、あの過去に対する寛大な思い出が、ゆるやかに浜に立つ人の胸に流れこむ。
有島武郎 / 生まれいずる悩み
春特有の気だるい空気
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
(冬のウグイス)ジュッジュッという啼き声がしてかなむぐらの垣の蔭に笹鳴 きの鶯 が見え隠れする
梶井基次郎 / 冬の日
同じカテゴリの表現一覧
春 の表現の一覧
風景表現 大カテゴリ