時折、幾つかの小さな感情の波が思い出したように彼の心に打ち寄せた。そんな時には鼠は目を閉じ、心をしっかりと閉ざし、波の去るのをじっと待った。夕暮の前の僅かな薄い闇のひとときだ。波が去った後には、まるで何ひとつ起こらなかったかのように、再びいつものささやかな平穏が彼を訪れた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:22% 作品を確認(amazon)
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冷静・落ち着く
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前後の文章を含んだ引用
......た。ぼんやりと目を閉じると、緩やかな水の流れのように時が彼の体を通り抜けていくのが感じられる。そして何時間も何日も何週間も、鼠はそんな具合に時を送りつづけた。 時折、幾つかの小さな感情の波が思い出したように彼の心に打ち寄せた。そんな時には鼠は目を閉じ、心をしっかりと閉ざし、波の去るのをじっと待った。夕暮の前の僅かな薄い闇のひとときだ。波が去った後には、まるで何ひとつ起こらなかったかのように、再びいつものささやかな平穏が彼を訪れた。 新聞の勧誘員以外に僕の部屋をノックする人間なんてまず誰もいない。だからドアを開けたこともなければ返事さえしたこともない。 しかしその日曜日の朝の訪問者は三十五......
単語の意味
平穏(へいおん)
鼠(ねずみ)
平穏・・・穏やかなこと。安らかなこと。
鼠・・・1.ネズミ科の哺乳動物の総称。人家の付近などに住む、敏捷な小動物。繁殖力が高く、食害や伝染病の原因となるため嫌われている。
2.鼠色(ねずみいろ)の略。
3.比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
2.鼠色(ねずみいろ)の略。
3.比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
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