冷たい雨にずぶ濡れて哀れに情けなく立っている

（大雪の日に）コートも着ない私の袖は、ぐっしょり濡れてしまって、みじめなヒキ蛙（がえる）のようだ。

横なぐりの雨が、 傘 をさしている邦彦の手の甲を冷たく 濡らした。

かじかんでこの雪の中を野良犬のように歩いている

野村吉哉さんが尻からげで遊びに来る。全身ずふぬれ。唇が馬鹿に紅い。

靄（もや）が下りていた。何時も厳しく機械的に組合わさっている通風パイプ、煙筒（チェムニー）、ウインチの腕、吊（つ）り下がっている川崎船、デッキの手すり、などが、薄ぼんやり輪廓をぼかして、今までにない親しみをもって見えていた。柔かい、生ぬるい空気が、頬（ほお）を撫（な）でて流れる。

雨は湯煙をたてているような激しさで四囲が乳色に染まってくる

重くるしい雨の音

どしゃ降りの雨が、土を削り取るような勢いで降り続いている。 　気温が、雨に吸い取られてみるみる下がっていくのが、肌で分かる。

（雨の歓楽街）水溜まりにネオンの色が落ち、それが宗右衛門町筋の路面に色とりどりの光を散らせている。