（舗道に捨てられたちらし）汚い鋪道（ほどう）の上に、散しの黄や赤が、露にベトベト濡れて陽に光っていた。

四車線ある一番左のラインは左折専用で、他のラインの流れはスムーズなのにそこだけ動いていない

夜になると街のアスファルトは鉛筆で光らせたように凍（い）てはじめた。

鎔鉱炉から流れ出る液体の鉄に見える（ヘッドライトに照らされた雨の）曲がりくねった道路

建物を映す濡れた道路

道路の小砂利が塩を撒いたように霜柱に凍てついていた。

この交差点はとてもグロテスクな形をしていた。まるで巨人が造った広い道路と小人たちが造った細い路地が交わっているように見えるのだ。 　たとえば広い国道のほうから走ってくると、直角に右へ曲がっているＬ字型の道にしか見えない。しかし実際はＬ字型カーブと見えた先には細い路地が伸びており、国道と平行に走る水路にかかる小さな橋がある。そしてこの水路が、昭和四十六年に埋め立てが完了し、沖合の島が陸続きになるまでの海岸線だったのだ。 　陸続きになった島には造船所の巨大なドックがある。これが巨人の街だ。そして海岸線を奪われた以前の漁村には、未だに細い路地が張り巡らされている。

蛇が皿を巻いたような丘の小道をぐるぐると下りて行く。

バス通りから櫛の歯のように路地が延び、

径の縁には赤土の露出が雨滴にたたかれて、ちょうど風化作用に骨立った岩石そっくりの恰好になっているところがあった。その削り立った峰の頂（いただき）にはみな一つ宛小石が載っかっていた。