息苦しいほどの湿度

窓を開けると湿った重たい風がまつわりついてきて、かえって汗が出た。

細い髪が何本か濡れた頰にからみついていた。微かな湿り気が彼女のまわりにオーラのように漂っていた。

（蒸気のような空気に包まれながら歌声を聴く）海のほうから何か濃密な、蒸気のような空気がぐわーっと押し寄せてきたのだ。《…略…》その重い空気はあっというまに私たちの間に満ち、視覚的にはうすい膜を作った。だから私の目にはさせ子が美しい噴水の向こう側にいるように見えた。揺れて、 濡れて、透けていた。声も水分を含んだように、少しだけゆがんで届いた。

湿気の多い土地で、霧もかかりやすく雨も多い。

（霧は）琥珀色の光沢となり、冬の午後の小さな太陽がその奥に融けるように輝いていた。

その時、東の空に流れる星が見えた。星は一筋の短い線を引いて消えた。

どんよりと曇っていた空に大きな指を 拡げたような黒雲がゆっくりと流れてきています。

ちょうど頭の上に十八九日ごろの月が、紙片（かみきれ）でも懸けたように不愛相に照っていた。

道路の上に樹林に挟まれた細長い空が残り、月明りの中にも星を銀砂のようにこまかくきらめかせていた。