ご満悦

『──俺は幸せなんだ。……』 　彼は先ほど、電気を消した子供部屋で、息子の手を握ったまま唐突に襲われた強烈な幸福感のことを考えた。『俺はこの子の父親なんだ。』と胸の 裡 で呟いて、その一言一言が──「この子」や「父親」といった言葉だけでなく、その関係性を紡ぐ助詞に至るまで！──彼を恍惚とさせた。それは、ほとんど自分自身を見失ってしまいそうなほどの大きな実感だったが、あの平凡なひとときが、それほどまでに特別だったというのは、結局、不安の裏返しであるようにも感じられた。まるで将来、自分の人生の最も幸福な時として、この夜のことをこそ思い出すのではと予感されるほどに。……

胸の膨れるような心地よさを感じる

毎日通って来ている新宿が、別の場所のように思えた。

あんまり幸福なせいか、かえって淋しくて仕様がない。

熱心な喜び

心臓は跳ねまくった。肋骨を折りかねない勢いだ。

心からの喜び

心が弾む

彼女が近づいて来ると、彼は独特の心の揺れを感じるのだった。それは遠足に出掛ける前の子供のような、不安と期待の混じったわくわくする心の病に似ていた。

二人の胸の中に、次第にお父さんの帰ってくる喜びが、水のようにわいて来た。

心が伸びるような気がする

二人の胸の中に、次第にお父さんの帰ってくる喜びが、水のようにわいて来た。

心が躍る

可愛いって言われたら心が成仏できる

躍り上がるように喜ぶ

「お帰り」義母は談笑をそのまま引きずった笑顔で雪見に声をかけた。

いそいそと楽しい

顔一杯に笑いを拡げながら

肉情はいよいよ超大な魅惑に圧倒され、吸い出され、放散され、やがて、ただ、しんと心の底まで浸（し）み徹（とお）った一筋の充実感に身動きも出来なくなった。