画学生の吉田さんが一人で遊びにやって来た。写生に行ったんだと云って、十号の風景画をさげて、絵の具の匂いをぷんぷんただよわせている。

大学って、そういうところだ。無責任を背負って、自由を装っている。未来どころか、三歩ほど先のことだって、本当は誰にも見えていないんだ。

女生徒たちは不恰好なブルーマースを家鴨（あひる）のように穿（は）いて

新しい制服の生徒たちの群れを眼を細めて眺めていた。まるで自分の子供たちが家へ帰って来たのを門に立って待っている父親のようにゆたかな楽しい気持であった。

教科書やテストという名の紙をだまって食べ続ける、がまん強い羊たち

（港町の娼婦）船員の腕にふさわしい逞（たくま）しい健康そうな女

警察に呼ばれて調べを受けました。疑われたのです。彼が行方不明になる前後五日間の生活について聞かれました。彼と交わした会話の一言一言、読んだ本のぺージ数とあらすじ、掛かってきた電話の相手と用件、食事のメニュー、トイレの回数、もう徹底的です。そういう事柄を一つ一つ文章にし、書き写し、推敲し、読み直すのです。海岸の砂を一粒一粒選り分けていくようなものです。

一つの事件を担当すると、捜査員は同じ土地に幾度となく足を運ぶことになる。

彼等の足どりは彼等が既に何年間も軍隊生活を経てきたことを示す、あの一定の歩幅と一定の角度をそなえた確かなものであった。

（女性アイドル）かわいい顔に似合わないほど脚にはしっかりと筋肉がついている。