絶品の天恵

甘味を加えると茄子の持ち味が逃げる

自然だけが作る甘露

卵は卵、鶏は鶏、牛は牛、豚は豚、すべての食べものが本来の味を保有している

力強く豊穣な味

野菜の、新鮮な香りがぷんぷんする

スーパーに行けば四季に関係なくほとんどの野菜が手に入るが、やっぱりうれしいのは燦燦の太陽を浴びたてのもの

（過保護に育てた野菜）丸かじりする野菜は夏の露地ものでないといけない。 　野菜に力がないといけない。 　秋冬の、ビニール栽培ものは丸かじりに向かない。 　だいたい「露地もの」という表現がすでにしておかしい。 　野菜はもともと、すべて露地ものであったはずだ。 　野菜というものは、元来、雨に打たれ風に吹かれ、雨ざらし、野ざらしが当たり前なのだ。 　雨に打たれてしなり、風に吹かれて揺れながら育つものである。 　ビニール栽培の野菜は、風に吹かれて揺れるということが一度もない。ただの一度もない。 　生涯、一度も揺れることなく、シンとして動かない。身じろぎもせずに育ち、花をつけ、実を結ぶ植物というものがあるだろうか。何だかこわい気がする。

田舎の空気のうまさ、野菜のうまさについてはいうをまたない。

熟れすぎて落ちたトマト

そのときの情景、味覚は、いまだに私の脳裡を去らない。

喉の奥がさっぱりしない

手ぬぐいで頬被りしなければ、頬が飛んで逃げ出しそうだ

説明のいらないおいしさ

「おいしそう！」と目を瞠った。

純白と浅緑の色は薬味や天盛りとして料理に添えると、素朴な色調が実にいい

冬があけて春が来た感じがする

緑鮮やかなグリンピースは、春ならではの味わい

ふくりほくりとしてて感動的な食べ物で、咀嚼嚥下のあとに一呼吸おいて、しみじみ東の空を見つめていたいほど

大根は哲学性を持った根菜だ。限りなく白は「無」を表し、９４％の水分のおかげで「寂」が成立し、あの特有の匂いに「侘」を感じ、生のまま食べるときの辛さは「生」を感じる。