少し大きく動くと他にぶつかってしまうほどたくさんの男女が踊っている

光と音楽とざわめきの洪水を掻き分けて表へ出る

混沌とした深夜のクラブ

その場所は説明がなければディスコティックというよりは巧妙につくられた温室か水族館と言っても通用しそうだった。何もかもがガラスで作られているせいだ。床と天井をのぞけば、テーブルも壁も装飾品もぜんぶがガラス製だった。そして至るところに巨大な観葉植物が配されている。 　ガラスの仕切りで区切られたブロックのあるものの中では人々はカクテル・グラスを傾け、あるものの中では人々は踊っていた。それは僕に精密な透明の人体模型のようなものを連想させた。ひとつひとつの部分がそれぞれの原則にしたがってきちんと機能している。《…略…》店内にはガラスの壁がはりめぐらされ、それは透明な迷路をさえ思わせる。

先ず酒をはこんでもらい、突出しでゆっくりとのみながら（あれとこれを……）と、そのときの躰の調子に合わせて口へ入れるものをきめてゆく

（部屋を案内しチップを受け取った）ボーイはにっこりして、賢い猫のようにそっと部屋を出て行った。

南部鉄の大きな 鉄瓶 や風鈴を店内のあちこちに配して、全体をくすんだ茶色に統一した凝ったつくりの喫茶店

この旅館名物の急勾配の階段

改札口からあふれてくる人の波が彼の眼の前でどっと散りみだれた。瓢吉の眼には波がしらのような顔の渦が勢いよく彼に向って殺到してくるような気がした。