（朝霧の中）坂の真下には、 葦 の葉の茂った海が長い半島にかこまれて、乳色の湖のように遠くまでつづいている。

沖へ沖へ低く延びている 三浦半島が遠く 薄暮 の中に光った水平線から宙へ浮んで見られた。

のぼりはじめた太陽に醒まされるように、（岬の村は）その細長い姿を、しだいにくっきりと、あらわしはじめた。

静かな海に靄（もや）はふかくたちこめていて、岬の村は夢のなかに浮かんでいるようにみえた。

緑色の棒を寝かせたような半島

微風が到るところで、彼女（高原）の柔らかい産毛のような若草と戯れ

街を見回す。白、灰色、黄緑色、黄土色、と私は学校で使う絵の具に書かれた色の名前を思い出しながら呟く。この街のほとんどは、この四つの色で塗り潰されている。 　この街のイメージカラーは白なんだよ、と、引っ越してきたばかりのころ、父が教えてくれた。清潔で、ニュータウンという新品の街のイメージにぴったりだからだろうか。確かに、駅も、駅前の広場も、学校も、全部真っ白だった。 　街の奥にある森の深い緑や凄みのある黒ずんだ土などは、どんどん街に塗り潰され、淡い四色に飲み込まれていく。

あたしたちは毎日、ずぶ濡れになるほどいろんな言葉を浴びせかけられているし、夕暮れ時には顎がだるく感じるほどしゃべってもいる。テレビをつけても、街を歩いていても、途切れることなく言葉が溢れ出す。ずぶ濡れどころか大きな湖《…略…》の真ん中で溺れてる気分だ。

赤土の斜面が、朝日を浴びて燃えるように鮮やか

一つの丘があった。両側を細い支流に区切られて独立し、芒が馬の 鬣たてがみ のように、頂上まで 匍は い上っていた。その形を私は 何故か女陰に似ていると思った。