海霧で川もお花畑も乳白色に漬かる

色のさめたカナキン（平織綿織物の一種）を垂らしたように、海上にはぼやっとしたもやが一面に立ちこめていた。

のどかな春霞が水平線にたなびく

重い冷たい潮霧（ガス）が野火（のび）の煙のように濛々（もうもう）と南に走って、それが秋らしい狭霧（さぎり）となって、船体を包む

紫色の霞がたなびき、これに入日の光がさして金粉を散らしたように見えた。

自分の鼻先も見えない

雨の澳門マカオ、それはこの憐れな町を更にみじめにするだけです。海も町もすべて灰色に 濡れ、

蘆洲は重たい露（つゆ）でしどろもどろに倒れている。

しばらく雲を見つめて、雨の小やみを待っていた。

雨が真っ青な空の、消えそうに白い雲から、光の中を降り注いできた。光のかけらかと思った。次々に大地を 濡らし、私たちの髪、色の違う黒と金の髪にも降ってきた。あでやかなもののようにきっぱりと冷たい影を落として、暖かい空気の中、その雨は落ちてきた。この美しい風景をサーチライトで照らすように、光の領域を 一瞥 しているように静かな雨だった。何もかもがきらきらと甘く見え、風景は 潤い、あまりの気持ちよさとまぶしさに自分が泣いているのかと思ったが、天からの水分がほほをつたっているだけだった。